不定期刊ZUBORA

思い立ったが吉日と思った瞬間やめたくなる、そんな日々の繰り言を綴る不定期刊行日録

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日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

日曜日の定期コーナー。日経、産経、読売、毎日の4紙から。

日経の「今を読み解く」欄では、滝田洋一(米州総局編集委員)が米国金融危機に関する6冊の本を紹介している。
ジョージ・ソロス『ソロスは警告する』(講談社、1680円)。副題は「超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」。

ソロスはご存じのように1992年のイギリスのポンド危機に乗じて、巨額の富を築いた伝説的な投資家である。そのソロスが昨年の3月の時点で、制御困難な金融危機が起こることを予見した本である。いわゆる後追い本とは違う確かな目があるといえる。でないと資産1兆3千億円など稼ぎだせない。そのソロスが危惧するのは、米国は景気対策をやろうにも足かせがある。ひとつは金融技術革新の行き過ぎで、行政当局がコントロールしきれなくなっていること。米国以外の国々がドルに信頼を置かなくなっていること。それと銀行が膨大な不良債権を抱え込んでおり、その損失額すら掴めていないこと。ソロスの危惧のもうひとつは、サブプライムローンなどリスクのある債権の証券化商品を売る時に、そのリスク回避の保険のようなCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を売って買う側に安心感を与えたが、実はCDSが金融市場で時限爆弾になっているというのだ。だからCDSを清算する機関、交換所を早急につくる必要があると言っている。
マイケル・コヤマ『ドル帝国の崩壊』(イースト・プレス、1890円)は、これまで世界貿易の基軸通貨だったドルの信認問題を扱っている。2011〜2015年までの近未来を小説仕立てに書いたものらしい。近未来、確かにドルは基軸通貨の地位を降りざるを得ない。世界の構造変化が起こるわけだ。波風が立たないはずはない。
チャールズ・モリス『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』(日本経済新聞出版社、1890円)この本は以前に紹介した。ジョージア・ガイス『サブプライム危機はこうして始まった』(ランダムハウス講談社、1785円)この本はサブプライムを金融津波にたとえて、現場報告をしている。リチャード・ビトナー『サブプライムを売った男の告白』(ダイヤモンド社、1680円)副題「米国住宅金融市場の崩壊」とあるが、なぜかアマゾンをみると、副題が「欲とペテンと無知!」となっている。ちょっとへん。もう1冊は木幡績『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書、798円)これも以前ちょっとふれたことがある。いずれにしても、いま書店の平台をにぎわせているのはこうした本である。

呉軍華『中国 静かなる革命』(日本経済新聞出版社、2000円)−日経−、評者・篠原総一。中国経済の本である。中国の経済成長は官製資本主義で成功をおさめた。通常、市場化は政府の介入を減らすプロセスだが、中国では市場化、資源配分を主導したのは政府だった。なぜそれで成長経済を持続できたのか。その謎に迫ろうとしている。中国は1994年に分税制を導入した。これまで税は地方ですべて徴収していたものを中央と地方にわけた。日本と同じだ。そこで地方財政は縮小せざるをえない。同時に土地の転売権を地方政府に認める。そこで地方は競い合って土地開発を行い、海外から製造業の企業誘致を行った。土地価格は上がり、働く場所もできた。しかし、競争の持ち込みは、貧富の格差の拡大にもつながる。また無理な開発は環境負荷増大など問題は山積している。そうした中で、中国が持続的な成長をしていくには民主化が欠かせないと著者は主張している。

産経新聞大阪社会部著『生活保護が危ない』(扶桑社新書、798円)−産経−、評者・浅野史郎。書き出しにこんな話がある。評者は20年前、厚生省の役人の時、韓国から福祉官庁の視察者に生活保護の説明をしたことがある。そのとき、高い生活保護基準に反して受給者が少ないのはなぜか、と聞かれ驚いたという。受給者が少ないのは、明らかに役所がそう誘導しているからだ。この本は全編怒りが充満していると評者は書く。それは役所に対してだけではない。高級車に乗って生活保護を受け取りに来る人や受給した金で覚醒剤を買う人たちに対しても怒りを矛先は向けられる。世の中には三代生活保護受給といった例も珍しくないという。もともと短期間受給を得て、生活の立て直しをして自立していく制度のはずだ。もちろん障害者には障害者年金で生活を守らなければならない。この生活保護制度だけでなく社会福祉制度全体の見直しが必要なのかもしれない。ようは名ばかりで実質を欠いた制度を今の社会に合うように変更すべきだろう。これは教育にもいえる。教育格差も大きくなっており、それが社会的な格差拡大にもつながってきている。

ジャック・ロンドン『火を熾す』(スイッチ・パブリッシング、2100円)−読売、毎日−、評者・福岡伸一、湯川豊。福岡は、評の結びで小説を読むことは自分を読むことだと書いていた。書き出しに村上春樹の短編「アイロンのある風景」を読んだとき、「火を熾す」を読みたいとおもったという。短編の中の若い女性は、高校一年の時にこの小説を読み、鮮烈な印象を受ける。一攫千金を求めてアラスカの氷原を旅する男がいる。零下50度の中で火を熾そうとする。マッチの数は限られている。凍える指。火はつかない。夜は迫る。女性はこの小説を読んで、この男は死を求めていると読んで、感想文にそう書いた。教師、級友は一笑に付した。しかし、彼女は確信している。なぜならこの小説は静かで美しく語られているから。福岡は「火を熾す」を読んで、短編の女性とは違った感想をもったという。それが先に紹介した言葉につながるわけだ。そして福岡はこの二つの小説を読むことを読者にすすめている。
湯川は、友人だった亡くなった写真家、星野道夫がこの短編に愛着を持っていたことを語っている。悲惨なのに、読後にいやな感じが残らない不思議な短編だと語っていたという。ジャック・ロンドンは100年前にこの小説を書いた。そのこと自体がすごいことだ。100年を超えて感動させるものにまさに文学の力を感じる。

ニール・シュービン『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』(早川書房、2000円)−日経−、評者・長野敬。今年の6月19日のNatureにヒトの祖先はナメクジウオと書かれていた。日本の研究グループが報告したもので、ヒトとナメクジウオでは遺伝子が6割共通だったという。その前はホヤが祖先といわれていたが、遺伝子解析の結果、より近いことがわかった。脊椎動物の遠い祖先の話である。魚が陸にあがる。その途上のミッシングリングだった生物化石を2006年に発見した著者らの本である。いま進化をDNA解析による分子進化学、進化生物学、進化発生学など多面的な視点からとらえる動きがある。DNAといった設計図がどうのように個体発生につながっているのか時間、形態的に追いかける手法も興味をそそる。評者は、動物個体が遺伝子DNAの情報によりつつ、「骨組み」ばかりか見る、聴く、嗅ぐなどの感覚機能まで、どのように作り上げるか、それが進化の流れの中でどう洗練されるか、そうしたことが大目標だと書いていたが、ヒトにいたる壮大な生命史、確かに私たちはその流れ末端に位置して、生きている。

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journalist-net 2008年10月05日(Sun) 11:52